もう一度あなたの周りの自然を見て見ましょう。
公園の草も空き地に生える植物も、売られている小松菜やほうれん草のように緑の濃いものはありません。よく見れば黄緑がかった淡い色をしていることに気づくと思います。これは、
緑の濃いものは不自然である、
このことを物語っているようです。
「硝酸性窒素」という言葉をご存知ですか?どこかで耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか?
これは植物にとっても、人間にとっても必要な物質です。なぜならこれがないと多くの作物は育たないからです。でも問題はその過剰さ、摂り過ぎてしまうと、強い発がん性物質になってしまうのです。さらに糖尿病やアレルギーの原因物質であると指摘する研究者もいます。
大切なのはバランスであって、偏ってはいけないわけなのです。
「硝酸性窒素」は特に、ほうれん草や小松菜、チンゲン菜などの葉物に多く含まれています。また、赤ちゃんの場合、酸欠で死亡することさえもあるのです。
毒への耐性は体重に比例します。小さい赤ちゃんに大量に与えてしまうと窒息状態に陥る危険性が、高くなってしまいます。これは赤血球の活動を阻害するために起こる症状で、赤ちゃんが青くなって死んでいくことから、「ブルーベイビー症候群」と言われています。
ヨーロッパや国際機関では、「硝酸性窒素」に安全基準を設けています。つまり「基準値を超えたものはリスクがあるから食べないように!」と呼びかけているわけです。しかし日本では、飲み水の基準はあるものの、野菜については規制がありません。そのためいわば“野放し状態”にある、そう言わざるを得ない状況があるのです。
どうしてこんな物質が植物に発生してしまうのでしょうか?
その原因は、肥料にあるのです。
「硝酸性窒素」の濃度は投入する肥料の「量と質」によって変わります。肥料が何であるかといえば「窒素成分」を軸に作られているものを指します。有機であれ、化学であれ、肥料とは“窒素が軸”、このことに変わりはないのです。
「窒素」は植物にとって“成長促進剤”にあたります。この窒素は有機肥料にも、化学肥料にも含まれていて、与えれば与えるほど、葉の色が濃くなっていくというわけです。
つまり肥料を使えば使うほど、「硝酸性窒素」の危険性が高まっていくというわけです。
こうしたリスクがあるにも関わらず、肥料を入れる。そこに貫かれている思想は「より多く、より速くを求める」、このことに他なりません。
すばやく成長させ、少しでも多くを収穫し、現金に代える。つまり自然な成長スピードを無視して、“経済効率”を優先する行為といわざるを得ないのです。
硝酸性窒素の問題は飲み水にも影響を及ぼします。畑に使われた家畜の糞尿が、地下水や河川を汚してしまうからです。
ヨーロッパでは、畜産と農業を一緒に行う伝統が長く、畜産から出る糞尿を肥料として使います。そのため硝酸性窒素による地下水汚染が深刻化していきました。こうした理由からヨーロッパ諸国では、面積当たりの家畜の頭数に制限を設けているのです。これは窒素を規制していることでもあるのです。
ヨーロッパの飲み水は地下水が主流です。家畜の糞尿を有機肥料として使うことで地下水を汚染し、それが飲み水となって人体に戻ってくるのです。
日本の飲み水はダムがメインですので、硝酸性窒素の問題には、それほど関心が高まらないのかもしれません。もちろん日本でも地下水から汲み上げた飲料水が基準値を超えるケースは報告されているのです。
親子二代にわたって自然栽培に取り組んでいる生産者の方に聞いたのですが、以前は放牧で牛を飼っていたそうです。その生産者のお父さんは牛の生態観察する中で、牛は自分たちが糞をした場所に生える草を決して食べないことに気づいたそうです。糞は動物性の肥料ですから、そこに生える草の色は当然濃い緑になります。
緑の濃い草を食べない、このことが意味するものは、硝酸性窒素の危険性を牛たちは本能で知っていることになります。そのまま観察を続けていると、季節が過ぎ、その場所の草の色がまた自然な黄緑に戻ってくると、牛たちは再び食べはじめるそうなのです。
その時に、「自分たちの農法は間違っていなかった」と感じたそうです。実際に肥料を与えた牧草を与えたところ、牛たちが大量死した事件が10年ほど前、北海道で起きました。
牛たちのこうした素晴しい本能は、現代人の私たちが何よりも退化させてしまったものではないでしょうか。当時は大量の抗生物質やホルモン剤、抗菌剤などを牛の餌に混ぜたりしていないわけですから、今よりはずっと良質であったことは想像できますが・・・。
見分け方 其の一
窒素の量は、葉っぱの色で分かります。窒素過剰な野菜は濃い緑色になる傾向があります。
葉野菜は緑が濃いものを避けて、色が淡くて薄いもの・黄緑色のものを選ぶようにしましょう。判断に迷ったら家の周りの自然な草の色と見比べましょう。
品種の特性で、そもそも緑が濃い葉野菜もあります。そこは難しいのですが、少なくとも「濃いものが良い!」という発想を捨てることが大切です。
そして特に小さいお子さんがいる場合は、きちんと肥料の使用状況を売り場の人にたずねましょう。そしてなるべく、色の薄いものを選ぶようにしましょう。
でも「そんな色の淡いものなんか見かけたことないよ」、そう思われるかも知れません。実際に畑では色が淡いと業者に買ってもらえない。だからより青々とさせるため、出荷前に窒素肥料を使って、色づけを行うこともあります。
しかし諦めなくても良いのです。なぜなら肥料を使わない自然栽培のものがあるからです。
「肥料を入れないで育つの?」とお感じになるかも知れません。しかし目には見えないけれども、土の中にも、空気中にも窒素はたくさん存在しています。
土の中の微生物の力を借りて「天然窒素」を、自分の成長に必要な分だけを取り込むのです。自分が生き残るための努力を精一杯するというわけですね。
肥料を入れることは、植物に本来備わっている才覚と生命力を過保護に甘やかし、結果としてその能力を怠けさせてしまうわけです。これは植物に限らず、人間の成長にも当てはまりそうですね。
肥料を入れない自然栽培は、その作物が持つ力を最大限引き出す農法です。人が肥料を与えないわけですから、根っこは地中深くまで、どこまでも生命維持に必要な養分を探していきます。
窒素は自分が必要とする分だけしか摂らないので、硝酸性窒素の濃度は低くなる傾向があります。品種の特性でそもそも濃いものもありますが、色は淡く、薄い黄緑色になっていく傾向があります。
でも肥料を入れないと貧弱で、おいしくなさそう・・・。まともに生育しないいんじゃないの?そんな風に思われるかもしれません。
自然栽培の野菜は、根の充実を図りながらゆっくり、ゆっくりと育っていきます。例えばニンジンで言えば、有機を含めた野菜よりも90日くらい生育が遅いのです。
ですから細胞が緻密になり、味わい深く、香り豊かな、とびきりおいしい野菜ができるのです。テレビなどで有名な某ソムリエが野菜の味コンテストを開催し、そこで優勝したのがなんと自然栽培のものだったのです。
国民の医療費は年間30兆円を超えています。生まれてくる子供の3人に1人は何らかのアレルギー症状を持って生まれて来るといわれています。ガンや糖尿病などの成人病も増え続けているのです。
このことからも私たちは、自然栽培の野菜を選択していく時代が来たと思っています。